イギリス留学 ざっくり日記

大学院で社会開発を学んだ話

人生を「自分の基準」で測ること②(漫画「雲の上のキスケさん」が教えてくれたこと)

前の記事に続いて、人生を「自分の基準」で測ることの大切さで思い出したもう一つの作品、漫画「雲の上のキスケさん」(著者:鴨居 まさねさん)について書きます。

この作品は「恋愛漫画」に分類されると思います。もちろん主人公の「まゆこ」と「キスケさん」の関係にもときめきが止まらない感じなのですが、私にとっては恋愛関係以上の、人生をどう生きるかを真摯に模索している人々の物語なのでした。
ネタばれは避けたいのですが、すみません、印象的な一場面だけ書きます。それは、キスケさんと出会った初めのころにまゆこが見る夢の部分です。少し説明するとこのまゆこという人は20代の会社員。あまり身体が強い方ではなく、特に雨の日の不調に昔からずっと悩まされています。

夢では高校生に戻ったまゆこのもとへ、雲に乗ったキスケさんが近づいてきます。「なんか用?」と尋ねるキスケさんにまゆこは泣きながら「あのね 高校の先生がね 雨の日はみんなダるいんだ おまえのはさぼり病だってゆーの でもあたしほんとに起き上がれないの だから雨降らさないで」と言います。
そんなまゆこにキスケさんは小さな箱型の機械を渡し、こう言います。「これはダるさを数字にしてくれるキカイ 単位は『ダルサ』 普通の人は50ダルサ~100ダルサ キミは360ダルサか ちょっとひどいね」「先生にそれで対抗してみなさい」。機械を受け取りキスケさんに「ありがとーっ」と手を振ったところで、まゆこは夢から目を覚まします。

・・・もちろんダルさを測るのは難しいと思いますし、もし測れたとしても「私の数値の方が高いから、あなたのダルさは大したことない」とは言えないと思います。でも痛みの知覚度合は人に拠って違うものなのに、自分の基準を相手に当てはめて判断することの残酷さを、この場面は教えてくれていると感じます。
私はこれを読んだ当時、入ったばかりの会社でうまく仕事が回せず、残業続きで睡眠時間も短くて・・・という状況でした。謎の吐き気や肌荒れにも悩まされていました。残業時間を減らすよう言う上司に自分の抱えている課題を伝えたところ、「大した仕事をしていない」「俺の方が忙しい」と一蹴されてとてもストレスを感じていたころなので、この漫画にとても救われたのでした。仕事はもちろん自分で回せるようにするものですし、当時の上司のコメントは当たっている部分もあったのでその後工夫して上手く進められるようになりました。でも精神的な部分はこの漫画の「たとえ他の人がどう思おうと、あなたの苦しさは無視されるべきものではない」というメッセージに支えられていました。

この作品では登場人物たちが自分なりの「基準」を見つけ、人生を少しずつ変えていく姿が描かれていると感じます。「パートナー」「家」「仕事」など、人生において大切な要素について自分の基準を持って測ろうとし、時に失敗し傷つきながらも、前向きに進み続けます。この漫画を読み直す度に何だかとても励まされていたのですが、その理由が大学院で学んで頭で理解出来たのでした。

・・・この2つの作品に最初に触れてから何年も経ちましたが、昔に比べると今はもう少し自分の基準で人生を測れるようになったと思います。今でも他の人から「あなたは本当に変だね」「他の人にもう少し合わせたら?」とアドバイスをうけることもあり、妥当と思う部分は受け入れつつ自分の基準は手放さないようにしようと思うのでした。それは結局、最後に人生を評価するのは自分だと考えているからです。

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