イギリス留学 ざっくり日記

大学院で社会開発を学んだ話

協力隊時代の勘違い①(きっかけ~結果)

今回は「開発援助」をどう捉えたら良いのか、重要な気づきを得た協力隊時代の経験を書きます。
簡単にいうと大きな勘違いをして落ち込んでいただけなのですが、そこから「開発」についてより包括的に学びたいと思うようになり大学院進学へと繋がりました。

誤解を避けるため最初にお伝えしたいのが、以下は私が賛成する考え方である、ということです。私の隊員仲間はこれとは違う考え方で活動し、成果を出し周りに喜ばれていました。当たり前ですが、人によって考え方は違って良いと思います。また、協力隊として要請されたメインの活動自体は派遣先の希望通りに実施したことも付け加えます。以下はメインの活動以外で私が行った経験からの反省です。

1.きっかけ
きっかけは私の派遣された国に、青年海外協力隊員有志による奨学金制度があったことです。この制度では希望する隊員は3人まで奨学生を推薦出来ます。日本と違い、公的な補助制度がほぼない国において、この制度はとても有益に思えました。

2.最初の気持ち
私は最初、この制度を利用する気はありませんでした。自分が派遣先に要請された活動ではありませんでしたし、求められていない援助を与えることは周りの人に悪影響を及ぼすと感じていたからです。そして周りの「外国人だからお金を持っていて、何かをしてくれるかも」という期待をいつも感じていたことも気になっていました。例えば、町で初めて会った人に、そして派遣先の同僚に、「私はこういう援助を○○に個人的に行っているんだが、君(もしくはJICA)も支援してくれないか」と言われることはよくありましたし、私と知り合いになって何かをもらおうとする人、日本に連れて行ってもらおうとする人・・・もいました。

日本であればその人との関係性によって何かを贈ったり助けたりは当たり前ですが、派遣国でそれをすると「お互い様」というよりは外国人による「一方向的な贈り物、施し」のような意味を帯びてしまうことも多く、相手を依存させてしまうと感じました。依存に慣れた相手は、自分で何かをしようと思うより先に、外国人に頼ろうとします。そして援助されたものを自分の利益に使ったり、必要ないのにあるだけもらおうとしたりどんどん悪い方向に進むことがあります。

隊員仲間でそういう人々を「援助慣れしている」と批判する人もいましたが、私は「慣れさせてしまう人にも問題がある」と考え、自分は相手を依存させないようにしようと考えていたのでした。

2.気持ちの変化
ただ半年も滞在するとクラスでも一・二を争う成績優秀で真面目な生徒でも、貧しくて高校に進学を出来ないことがよくあると分かってきました。中学までは義務教育でほぼ無料ですが、高校の授業料その他は生徒の出身家庭にとっては負担するのが難しい金額となります。私の活動地域はその国の中でも貧困率が高いと言われており、その時教えていた中学3年生の中にも進学が難しい子がいると分かってきました。そしてだんだんと「活動外だとか悪影響を与えるかもとか行動しない理由を正当化するより、今できることをするべきではないか」と考え、奨学金制度を紹介することに決めました。

3.実行
そこで一番信頼していた同僚にこの件を相談したところ、「それは良い制度だね。ぜひ今の3年生に紹介しよう!」とすぐにその人が生徒を3人選定、各々に家庭環境を聞き取り・・・と進み、瞬く間に奨学生3人が決まりました。私は展開の速さに驚きながらも、その3人の学力や勉強への熱意は授業を通して知っていたため、奨学生として問題ないようと考え、特に口を挟みませんでした。

そしてその日から明らかに一部の生徒との関係が変わりました。まずは知らない生徒から挨拶されるようになりました。奨学生には口止めしていたし奨学金がもらえるかは聞き取った状況を考慮して奨学金委員会が決めると話していたのですが、新しく来た外国人のボランティアの先生が奨学金を紹介してくれるらしい、と学校中に広まったのだと思います。挨拶を返しながら物悲しい気持ちになりました。

それから、奨学生に選ばれた生徒がものすごく私に気を遣うようになりました。もともと派遣校では生徒が先生に丁寧に接する文化がありましたが、その子たちが私と話すときに今までの気さくな感じがなくなって顔色をうかがっているのを感じました。その時、奨学金の紹介によって、生徒と私の間にはっきりと上下関係が出来たことを気づいたのでした。

また、同僚にのもとに自分にも奨学金が欲しいと言ってきた生徒が何人かいたと後から聞いて、彼にも迷惑をかけたと申し訳ない気持ちになりました。他の先生は何となく奨学金について知っていながら、遠巻きに見ている感じでした。

4.結果
奨学生は統一テストで優秀な点数をとり、奨学金を得てその地域でも一番の高校に進学しました。半年後、その子たちが学年でも上位の成績で学期を終了したと同僚経由で報告がありました。勉強を頑張った生徒たちは本当にえらかったし奨学金の意味はありましたが、私のこの援助方法は良くなかったしもっと悪い結果をもたらす危険性があったと本当に反省しましたし、落ち込みました。

では何が良くないと自分で感じたのか。それを具体的に分析せずもやもやしていたのですが、ある先輩にアドバイスを受け、書き出してみた所自分の反省点が分かりました。次の記事で紹介します。