イギリス留学 ざっくり日記

大学院で社会開発を学んだ話

はじめに(ブログの目的など)

まず初めに、このブログの目的や自己紹介などについて書きたいと思います。

1.ブログの目的
このブログは、進学前に自分が知りたかったことを共有するために書いています。
「イギリス」の「大学院」で「開発学」を学ぶ、ということに長年興味を持っていたのですが、分からないことがたくさんありました。経験者は周りにもいたものの、あまり根掘り葉掘り聞くわけにもいかず・・・そんな時他の方のブログがとても役に立ったし面白かったのでした。そこで、私も特に以下3つについて共有したいと思い書いています。

2.知りたかったこと4つとカテゴリー
① 何を学ぶの?

「開発学」と言っても幅広いですし、どんな内容を学ぶのかとても気になっていました。そこで、ほんの少しではありますが、学んだ知識や文献を記事で共有しています。これに関する記事はカテゴリー「学び」としています。

② どんな感じで学ぶの?

ざっくりとした質問ですが、授業の進め方や先生や生徒の国籍や性格・・・そういった雑多な話に興味がありました。そこで、雑文のような自分の体験を書いています。カテゴリーは「体験」としています。

③ 学んで何が変わるの?

それなりの時間とお金を費やすからには、意識や行動に変化が生じるのではと思っていました。履歴書に「修士取得済み」と書いてより良い仕事をゲット!以外の大学院で学ぶ影響を書いています。カテゴリーは「学びからの気づき」としています。

④ 最低限何を知っとけばいいの?

これは人に拠って違うと思うのですが、大学院に進学して学びなおした、これは知っていた方が良いなと思った基礎知識についても書いています。カテゴリーは「開発基礎」としています。

3.この日記で気を付けたこと
①主観多めに書く
この日記は私が思ったことや学んだことを中心に書いているため、あまり役には立たないと思います。勉強の役に立つ情報が欲しい方は、他の方の素晴らしいブログをご覧いただければ幸いです。私は主観多めのブログ記事を読むのが結構好きなので自分も書いてみました。私(書き手)の見方に偏りがあることも考慮していただきながら、楽しんでいただけたら嬉しいなーと思っています。

②あくまでざっくり書く

ざっくりという言葉にはいくつか意味があるようですが、この日記での「ざっくり」とは「雑な」ではなく、「全体を大きくとらえる」という意味で書きたいと思っていました。そのため、雑にならないように他の人の意見と自分の意見を明確にする、細かな説明は本文ではなく出典で補足するなど気を付けました。

③難しいことはあまり書かない

私には開発援助や国際協力の話はとにかく難しいと感じることが多いため、大学生の時の自分(知識なし、難しい話きらーい)でも読めそうな文章を書きました。具体的には専門用語には説明を補足したり、手書きの絵をつけたりです。
ただ書いてみると基礎の中の基礎の話が多くて私以外みんな知っているかもと不安になったり、絵も文字もへにょっとしてるな・・・と気付いたりしたのですが、親しみやすいかもだしまあいっかーとか思ってそのまま載せています。

4.自己紹介
日記には、書き手のそれまでの経験や性格が影響してきますので、自分についても少し紹介します。地方都市出身、大学で国際関係学を学び、一般企業で数年働いた後、青年海外協力隊として某アフリカの国で先生として活動しました。帰国後、公的機関で数年働いて大学院に進学しました。
上記のため「開発について少し知っているのみ(専門的に学んだことはない)」「半年以上の海外滞在経験は協力隊のみ」です。アフリカ・アジア・ヨーロッパ数国は旅したことがありますが、その他の地域の知見は少ないと思います。また、性格は内向的な方で、大勢で飲んだり遊んだりするよりも、一人で本を読んだり少数の友人と遊ぶことが好きです。

・・・このブログのコンセプトは、(大学院を修了した)私による、(大学生の時の)私のためのブログ、です。大学生の私はこのブログを暇なときに読んでまあまあ楽しんでくれるのではないかと思っています。自己満足なコンセプトですが、自分以外で一人でも楽しんで読んでくれる方がいらっしゃれば、とても嬉しいです。

記事一覧

記事をカテゴリー毎にご紹介します。

 

<カテゴリー>

カテゴリー一覧は以下です。まず「はじめに」を読んでいただき、後は好きなカテゴリーの記事を読んでいただけたら嬉しいです。

はじめに(ブログの目的など)

開発基礎 カテゴリー

開発・社会開発の基礎を学べた本

「社会開発」の定義

「貧困」の定義と測り方②「貧困をめぐる議論の側面」

「貧困」の定義と測り方①「代表的な貧困指標」

開発援助が暗に意味するものや留意点

「開発」そして「援助」とは何か


学び カテゴリー

勝手に尊敬② エスコバル・アルトゥーロさん

勝手に尊敬① アマルティア・センさん

「教育」の目的

開発へのCriticalな視点②

開発へのCriticalな視点①

人権についての考え方②(子どもの権利について)

人権についての考え方①(普遍主義と文化相対主義)

DecolonizationとAlternatives(開発に代わるもの)について


経験 カテゴリー
大学院進学のきっかけ・コース選択の理由など

修羅場の図書館

コースメイトについて(出身国や交流の記録など)

「知るのが怖い」の、後

Academicな言葉たち

大学院の授業の流れ

力関係について

協力隊時代の勘違い②(反省点~次への対策)

協力隊時代の勘違い①(きっかけ~結果)


学びからの気づき カテゴリー

人生を「自分の基準」で測ること②(漫画「雲の上のキスケさん」が教えてくれたこと)

人生を「自分の基準」で測ること①(ミュージカル「レント」が教えてくれたこと)

Critical thinking, unpackについて

「本当」の参加型ワークショップとは② 参加者編

「本当」の参加型ワークショップとは①ファシリテーター編

良い援助とは何か例えてみた話

 

エッセイ奮闘記 カテゴリー

1.エッセイ奮闘記を書く理由

2.エッセイ基本

3.不正行為 (Misconduct)について

4.役立った資料

5.エッセイの回数と点数

6.エッセイにかかった時間

7.先生のコメント

8.工夫したこと(人からのフィードバック編)

9.工夫したこと(書き方編)

10.読み方

11.目標の点数を取ることの意義について

12.各先生とのエピソード

 

12.各先生とのエピソード

特にエッセイを書くときに助けてくれた先生2人について書きます。仮にA先生とB先生としています。他の方の参考になればと思い、共有します。

1)A先生

まず、秋学期に受講した科目のA先生とのエピソードをご紹介します。彼のやさしさとアドバイスのおかげで一番きつい時期を乗り越えられたと思い、本当に感謝しています。

・きっかけ:A先生への質問
きっかけは2回目のエッセイの提出を控えていた12月の最後の授業でした。A先生はもともと優しい方で、最初のエッセイでも書き方を丁寧に解説してくれたのですが、2回目のエッセイに関しても質問出来る時間を授業中に設けてくれました。

その時の私は、最初のエッセイの点数が悪く自分の知的かつ英語能力の低さに落ち込んでいました。そこで何とかこの気持ちを打破したく、A先生へ「エッセイの下書きは、母語第二外国語である英語のどちらで書いた方が良いと思いますか?」と質問をしました。

A先生に聞いた理由は、彼にとっての第2外国語であるスペイン語でその人が論文を書くこともあると以前話していたからです。その時の私は、最初からアウトラインや下書きを英語で書くと分析が浅くなるような気がしていたのですが、日本語で書くと英語に訳す手間がかかるためどうすべきか迷っていたのでした。

・A先生の対応
A先生はまず私の質問へ丁寧に回答してくれました。曰く、母語第二外国語のどちらで論文の下書きを書くのが良いか自分でも分からないこと、状況や人に依るため一概には言えず、自分も試行錯誤の途中である、とのことでした。

次に、他の英語が第二外国語であるコースメートにも質問してくれ、3人ともエッセイは最初から英語で書くと答えました。それから先生は「つい他と比べてしまうかもしれないけれど、以前の自分と比べて成長しているかどうかに意識を向けた方が良いと思うよ。」、そして「第二外国語でエッセイを書くことは大変だと思うけどその大変さを乗り越えた時、君はその分何かを得ているからその苦しさは報われるからね。」と、ものすごく優しく話してくれました。

・私の反応
私は一言回答くれたらいいな、くらいの気持ちだったので、A先生が時間をかけて回答してくれたことに驚くとともに本当に申し訳ない気持ちになりました。また、他のコースメートは私よりも英語も知識量も上だと感じていたので、私の質問で10分以上も時間をとってしまったことにも罪悪感を抱きました。

また、自分が英語能力のなさに甘えて、努力をしていなかったことにも気づきました。最初のエッセイは苦しみましたが、気分転換と称して何時間もネットサーフィンをしたりして、全力で準備したかというと、決してそうではなかったからです。

・気持ちの変化
たっぷり3日くらい「能力が足りないのに、努力もせずに愚痴って、他の人に迷惑をかけた・・。」と落ち込んでいたのですが、自分を責めるのにも疲れて、ふと「じゃあ最大限努力をすればいいじゃん。」と開き直りました。英文を読むのも書くのも人より遅いのであれば、人より時間をかければいいだけでしょ、と当たり前のことに気づいたのでした。

・その後
それからは朝から夜まで、ひたすらエッセイ執筆を行いました。家では他のことをしてしまいそうだったので、図書館にずっとこもっていました。その時試しに、アウトラインは最初日本語で書いた後に英語で書きました。英語文献があまり理解できないときは、日本語に大まかに訳してそれを読んでみるということもしました。まずは何でもやってみようと思ったからです。

12月のイギリスは日照時間が短いので、家を出る時も帰るときも周りが暗くて、時間の間隔がなくなってきました。同じことを繰り返しているので曜日も分からなくなるのですが、爪が伸びていることに気づいて前回爪を切ってから1週間くらいが経ったのかなと思う感じでした。クリスマスもお正月も関係なくただひたすら読んで書いていました。

・結果
「出来る限り努力したかな」と思えるくらい取り組んだ2回目のエッセイは、最初のエッセイより9点点数が上がっていました。最初のエッセイがひどすぎたとはいえ、自分でも内容や書き方が改善したと思えるものが書けて嬉しかったです。

点数を受け取った後、A先生の研究室へエッセイのフィードバックを得るために訪問し、アドバイスの御礼を言いました。その時もエッセイの改善の余地を控えめながら色々アドバイスしてくれ、私の細かな質問にも答えてくれました。最後の最後まで、素晴らしい対応をしてくれて本当に嬉しかったです。

彼が言ってくれた「他人とではなく、以前の自分と比べて成長したかを考えた方が良い」「乗り越えたら、その分何かを得られるよ」という言葉は、今後上手くいかないことがあったら思い出して努力しよう、と思っています。そして、出来の悪い生徒にも最大限の気配りと優しさをくれた彼のように私も行動したいと思っています。 

2)B先生

もう一人、エッセイを書く際に助けてくれたB先生とのエピソードを紹介します。B先生は秋学期の授業を他の先生(C先生とします)と一緒に担当していた先生でしたが、厳しさと優しさの半分で接してくれたのでそれもとても勉強になりました。

・最初のエッセイ
最初のエッセイの提出前にアウトラインについて相談に行った際、アドバイスをしてくれたのですが、私には理解できないことが結構ありました。その後に考えたり調べたりしてB先生へ再度質問すべきだったのに時間がなく、分からないまま書き上げたエッセイは点数がとても低くなってしまいました。

そのエッセイへのB先生からの評価コメントには「英語にも内容にも問題があるので、自分からフィードバックを得るためにアポをすぐにとることや、大学の行っている留学生のための論文支援サービスを受けることを強く勧める。」と書いてありました。大学院の支援サービスは何回も利用していたのですが、それでもレベルが低い内容なのかとものすごく落ち込みました。

・B先生からのフィードバック
エッセイに関するフィードバックを受けにB先生の研究室に訪問すると、彼は意外にも優しく励ましてくれました。分析が浅いこと、エッセイの構成がルールに沿っていないことを正直に指摘しつつも、自分も英語は第二外国語だから論文を書く大変さは分かるよ。とにかく努力あるのみだけどアドバイスが必要だったらまた連絡してね、と言ってくれました。

・2回目のエッセイ
2回目のエッセイはB先生とは別のC先生が相談窓口となってくれたのですが、この方は極力アドバイスをしない方針だったのかアウトラインの相談をしてもほとんどコメントをもらえませんでした。C先生からは「アウトラインの書き方は人に依るから」と至極まっとうな意見をいただいたのですが、自分のアウトラインに自信がなかった私はとても不安でした。

またC先生はその訪問の後は休暇に入るので一切質問へは対応しないと言っていて、最初のエッセイのように分からないまま書いたら2回目のエッセイも点数が低いのではと心配になりました。そこで、B先生へメールでアウトラインを送り、良ければアドバイスをいただけたら有難いと連絡してみました。
その後B先生は返信をくれ、最初のエッセイと同じ問題があることを指摘してくれ具体的なアドバイスをくれました。

そのメールに追記してあった、「文献についてもアドバイスが欲しければ言ってね」という社交辞令にも甘え、自分が使うつもりの文献を送ったところ20くらい他の参照文献を送ってくれました。そして、先生が送ってくれた文献を読んで、自分の今まで読んでいた文献が偏っていたことに気づきました。

B先生のおかげで、自分のエッセイの課題(取り上げるテーマを広く設定しているため議論が浅くなりがち)と文献の偏り(自分の支持する論点ばかりを読んでいた)を改善出来ました。年末は大学が休みの日なので返信してもらって本当に申し訳なかったですが、B先生のアドバイスがなければ合格点に到達しなかったかもしれません。

・結果
こうやって執筆した2回目のエッセイは最初より点数が上がりました。また、自分の改善すべき点がB先生のおかげで明確になり対策が立てやすくなりました。特に、英語の文法や論文の構成が良くないことをはっきり言ってくれてとても感謝しています。
その後も他の先生からエッセイに対してコメントをもらうことがありましたが、内容以外の英語の改善点について詳細を指摘してくれる人はいませんでした。B先生から文献リストが送られてきたのは12月23日でしたが、私にとっては少し早いクリスマスプレゼントに思えたことを懐かしく思い返します。

このように、先生に手間をかけさせるのは申し訳なかったと思うものの、改善するためには時に自分から積極的にアドバイスをお願いすることの大切さを知った出来事です。先生が優しい方でアドバイスするよ、追加で質問しても良いよ、と言って下さる方であれば、最大限の感謝をして自分でも調べて考えたうえでその優しさに甘えるのも良いのではと思ったので書いておきます。

 

11.目標の点数を取ることの意義について

私は60点台後半をとることをいつも目標にしていました。なぜなら、たいていのモジュールの平均点が60半ば前後だったからです。高ければ高いほうが嬉しいのですが、理想が高すぎても良くないと思い今の自分がとった点数よりも少し上を目指していました。
その意図はもちろん合格点をとって修士を取得することでしたが、それに加えて仕事で英語の報告書などを書く際に平均以上のレベルの文章をかけるようにしたいと思ったからです。また、人に評価されるプロセスも磨きたかったので、先生の研究室に相談に行って的確に評価ポイントを理解しようとしました。
その理由は、修士取得後も評価者(上司や組織)の期待に合う文章をかけるように練習をしたかったからです。評価軸は評価する人に拠っても違うので、目標とする点数は得るということは将来の仕事で希望する評価を得ることに繋がると認識していました。もちろん論文の内容を先生の好みに合わせたりはしていませんが、先生が何を重視しているのかを常に意識していました。先生が支持していない理論や例を支持する場合、先生が納得出来るような根拠を示さなければ授業を理解していない、学びが浅いとみなされると思います。誰にどう評価されたいかを意識し、その結果が分かりやすく点数として得られるエッセイ執筆の経験はとても勉強になりました。

結果的に目標としていた60後半以上が取れたエッセイは6本中2本だけで、あんなに時間と手間をかけたのにと悔しかったのですが、最大限努力して60前半がとれるスキルが身についたという点は成長と見なそうと思います。

10.読み方

ここでは読み方について書きます。

1)参照する文献はいくつか
これは課題を評価する先生に事前に質問していただけたらと思うのですが、秋学期に受講した科目の先生は雑談の中で「自分の見解としては2000語で最低8文献以上必要、それ以上多ければいいけど20以上とかあまり多すぎても、2000語だとまとめるのが難しいかもしれないねー」と言っていました。

春学期に受講した科目の先生が過去の生徒のサンプルとして出してくれたエッセイは、5000語でreference(参考文献)が18本で72点を獲得していました。私は同じ5000語で25本の文献を参照し63点だったので、参照数が多ければ点数が高くなるというわけではもちろんありません。ただ良いエッセイを書くためにはそのトピックについて広く時に深く知っている必要があるため、直接の参考にはしなくてもたくさんの文献を読むことが大切、と先生からは言われました。
読み方ですが、私は以下のように文献リストをエクセルで作っていました。

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この表では、カテゴリーと文献名、そして余裕があれば要約を書いていました。最初はこれに受講している科目のガイドラインに記載してある必須、推奨文献を記載してざっと読みます。また、ネットの記事などは見つけたらその都度Evernoteへ保存しておいて、後で速読もしくは熟読するようにしていました。それも参照出来そうなものはこのリストに記事名やリンクを追加します。後で「あの情報どこにあったっけ?」と探す時間が発生するのを防ぐためです。
慣れてくると文献管理ソフトウェアに見つけた記事などを直接保存したりしました。ソフトについては以下ページを参考に掲載いたします。ただ使いやすさや大学によって有料版が無料で利用出来たりするなどあるので、どれが良いかは人に依ると思います。私はZoteroを使っていましたが、主な理由は大学の図書館のパソコンで利用出来たからです。
Best Reference Management Software 2021: Compare Reviews on 40+ | G2

2)メモの取り方
読んだ文献のメモの仕方は論文の重要度によって変えていました。大きくエッセイで参照する文献と参照しない文献に分け、参照する文献もエッセイの要(コア)となる理論とそれ以外で分けていました。
コアとなる理論の論文は内容を深く理解する必要があるため、印刷した文献資料の重要な部分へマーカーをして、余白に要点を書いて、必要な場合は更にノートにまとめるようにしていました。コア論文は3回以上読んで理解して、エッセイを書いている間も何度も見直します。
下はコア論文のコピーです。

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下はその他の論文のまとめノートです。最初にざっと読みながらハイライトやコメントを付けて、参照する可能性があるものを箇条書きでページ数とともに簡単にメモしていました。

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私はアナログ派でしたが、OneNoteや他のソフトウェアを使ってデジタル管理している人もいました。検索が出来る点では、デジタルの方が便利だと思います。
先生が授業で推薦文献として提示したものは全てざっと目を通すようにしていましたが、その中で参照しないものもリストにその文献名と「不要。主に○○について書いてあるため。」などコメントしていました。後で内容を忘れて再読する手間を省くためです。

9.工夫したこと(書き方編)

ここでは書き方で工夫したことを紹介します。

1)アウトラインは早めに確定する
私は自分の書きたいこと、そしてアウトラインから読むものを早めに決めるようにしていました。なぜなら、最初のエッセイ提出の際に文献を広く読んだ後にアウトラインを確定させようとしたのですが、結局自分の書きたいことやエッセイの結論は文献を10本読んだ段階と30本読んだ段階とでほとんど変わらなかったことに気付いたからです。そのため、参照文献が載っているハンドブックをもらった時(授業一回目)から自分の書くテーマを絞る2~3つに絞る方法へと変えました。

授業では毎週テーマが異なるのですが、その週のテーマの準備と自分のエッセイのテーマの準備に半分ずつ時間を使っていました。エッセイの準備は「分からない基礎知識はテキストやウェブで調べる→必須文献の概要を10~20くらいざっと読みアウトラインをつくる→先生に相談(2回)→エッセイを書きながら、このアウトラインに合う文献を読み進める」という流れで行っていました。

2)理論を先に書く
私は書く順番として「最初に論文のコアとなる理論→それを補助する考え→それに反論する考え→例」で行うことが多く、理論を先に書くことを心掛けていました。これは、ある授業でサンプルとして先生が教えてくれたエッセイを参照した方法ですが、議論の流れは人に拠ると思います。

3)語数から段落数を仮決めする。
エッセイの書き方についての本には1ページ(約340語、ダブルスペースで)が3段落(パラグラフ)くらいに分けられているのが分かりやすくて良いと書いてあったりします。また、他のコースメートのエッセイを読んで1段落は100語~300語(多い人は500語を何段落かで使用)と分かったので、それをもとにエッセイの段落を決めるようにしていました。
つまりは5000語なら250語×20段落くらい、ということを最初に決めます。『英語論文の書き方入門』の31ページに、「1つのパラグラフでは限定されたトピック(topic)1つについて1つの主張を述べる」と説明があるのですが、段落数が決めるとそのエッセイに入れられるトピック数を大まかに決めることが出来ました。

4)アウトラインを最初は付箋で管理する
段落の1文目はtopic sentence(主題文)となります。そのため、私はまず付箋に自分の言いたいことや重要な点を書きだして、1つの付箋を1段落として仮に組み立てるということをしていました。付箋を並べてみると漏れや重複が分かり頭を整理することが出来ました。また、先生に相談してアウトラインが確定するまでは構成が変わり続けるので、付箋で入れ替えられるのは分かりやすくて良かったです。
以下例として、平和教育をテーマにして書いたエッセイを載せています。

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最初のアウトラインから微修正を含めると10回以上段落の構成を私は変えていたので、この方法は有効でした。最初はそれをいちいち紙に書き直していてとても時間がかかりました。
アウトラインが確定したら、付箋ではなくエクセルで管理していました。エクセルには段落毎の語数(予定と実績)を入れて全体のバランスを確認していました。この表で特に重要なことではないのに語数をかけているところに気づいて削ったり、重要な点の語数を増やしたりの調整が出来ました。
以下が実際使っていたエクセル表です。

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この表は「予定」と「実績」の語数を入れて、どの項目に過不足があるかを確かめるために使っていました。ただこれで大まかに流れが出来ると直接エッセイを修正するので、この表の予定はエッセイ最終版とは異なっています。
予定ではIntroduction300語、その後のサブセクションを1つ(合計1100語、全3段落)で考えていましたが、提出した最終版のエッセイを見ると最終稿は以下の構成に変わっていました。そのため、最初のエクセルの予定はあくまで目安です。

 

語数(合計)

段落(合計)

予定/最終報

予定

最終版

予定

最終版

Introduction

300

299

1

2

サブセクション1

1100

1316

3

5

 

 

8.工夫したこと(人からのフィードバック編)

第1回目のエッセイの点数とコメントを見て、大学院で評価されるエッセイについて正しく理解出来ていないことに気づきました。その後色々と試行錯誤したのですが、以下は効果がありました。

1)70点台をとったコースメートのエッセイを見せてもらう
→秋学期の最初のエッセイを提出した後に、優秀かつ優しいコースメート達とお互いにエッセイを見せ合う機会を得ました。ここで70点台をとったコースメートのエッセイの構成自体が、50点台だった自分のエッセイと全く違うことに気づきました。そして私のエッセイは英語でのエッセイ(かつ論文)の書き方に沿っていないため、分析が足りない、’Descriptive(描写が多い)’と評されていたと分かりました。ここで構成(特にアウトライン)の重要性に気づいたことはとても大きな学びで、以後ずっとそれについて先生からアドバイスをもらうようにしていました。

2)先生にエッセイのアウトラインを見せてコメントをもらう(2回くらい)
→エッセイの構成や段落の流れで内容がanalyticalかが決まると思ったので、アウトラインについて先生に最初に相談するようにしました。1回目のアドバイスで構成が大きく変わったり必須文献を紹介してもらえたりするので、春学期からは先生への相談は2回以上出来るように早めに用意しました。
エッセイ提出1ヵ月前になると他の生徒が研究室に押し寄せアポがとりづらくなるので、2ヵ月くらい前に1回目の訪問、1ヵ月前に2回目の訪問を行いました。また、1回目のアドバイスでアウトラインを大きく修正することが多かったので、2回目の訪問で先生からのアドバイスを反映した修正後のアウトラインが正しいかを再確認することは重要だったと感じています。

また、1回目の訪問でアウトラインの流れについて具体的なアドバイスをもらえたことはすごく助かりました。「セミナーなどで基本は学んだけれど、英語でのエッセイの構成が分からなくてとても苦しんでいる。」と本音を伝えたところ、優しい先生方だったので口頭で「例えばこういう議論の流れが考えられるかもね、最初はこの理論を説明して~」などのヒントをくれました。
また2回目の訪問では「あなたの議論のここが深く分析出来ているね。」「この観点は重要に思えると思ったよ。」とコメントをもらい、そこをより強調した形でより深い分析をするように修正したりしました。その後、もう一度授業ノートを見直すと、コメントされた所は先生が重要だと強調していた点だったりしました。

先生へ相談する前の準備も入念にしました。まず事前に質問を整理して、それを質問する文章も書きだした台本も用意しました。台本を読んだりはしないですが、これを用意することで自分が話すことに夢中になって先生のアドバイスを聞き逃すことを防ぐことが出来ました。また、先生によっては訪問の際に録音を許可してくれたので、質疑応答を録音させてもらい後で聞き直していました。これは私の英語能力が限られていたためですが、出来る限り「自分の疑問を解決する。先生のアドバイスを理解する。」ために準備をしていました。

3)先生以外のネイティブからコメントをもらう
大学が提供する英語が第2外国語の生徒向けの無料のTutorialサービスを何回か受け、コメントをもらったのも英語を改善するために良かったです。というのも、細かな英語の文法の間違いや構成の変な所は、エッセイの評価者である先生はわざわざ細かく指摘しないからです。(忙しいし、基本的なことだからです。ただその不足分で点数を下げるのみだと思います。)
正直フィードバックは毎回厳しめで、自分の知識不足や英語力不足のなさに落ち込むのですが、「エッセイ提出前に改善点が分かってラッキー!その分点数上がるし!」と思うようにしていました。

4)提出後:評価コメントの詳細を聞くため、先生の研究室に行く
→エッセイの点数が出た後、そこに記載された評価コメントについて質問があれば来ていいよ、と先生が言ってくれます。コメントはたいてい短かったのですが、訪問して細かく質問すると意外な点を指摘してもらえたりして有益でした。

5)ネイティブに校正(Proofread)してもらう
友達でも良いと思いますが、私は有料のサービスを利用しました。高額なのですが自分の文法の癖なども知れますし、意外なところが修正されたりするので、毎回は金額的にきついですが試しに1回利用するのも良いと思いました。(私の場合は思わぬところでアメリカ英語を利用していたことに気づけたりしました。)
ただProofreadを他人に受ける場合には細かなルールがあるので、それを正しく理解している人に頼むのは必須だと思います。例えば、proofreadの際に論文の内容を他者が変えてしまった場合、それは不正行為になってしまいます。詳しくは「3.不正行為」についての記事をご覧ください。

7.先生のコメント

特に最初は基本的な改善点についてエッセイに点数をつけた先生からコメントをもらい、とても有益でしたので以下一部紹介します。

1)エッセイの質問に回答するのに最も有効な議論(argument)を1~2個を選び、それを中心にエッセイを展開し、例も絞った方が良い。

→私のエッセイが講義で紹介された議論の一覧みたいになっており分析が浅い、と評価された時にこのアドバイスをもらいました。「議論を数個に絞ることで重要な議論を入れ損ねて、合格点をとれなくなるかものが心配なのですが・・・」と素人な質問をしたところ、「・・・そうだね。でもたくさんの議論を羅列するだけで分析が浅いとそれはそれで点数低くなるよね」ともっともな回答をいただき、納得出来ました。

2)自分の支持する理論を明確にしたほうが良い。

→例えば「自分はこの『著者』『学派』の論点は、この課題を検討する上で重要であると考える、なぜなら(この後の理由付けが大事!)~」と明確に書くなどです。ちなみに講義などで紹介された「理論」を使うことは必須だと思います。私はあまり事前知識がなかったので、必須文献として授業で紹介された論文の中から自分が支持できる理論を使うようにしていました。

3)常にエッセイの直接関係する議論、理論にそってデータや例を使ったほうが良い。

→これは繰り返し指摘をうけました。私はそのトピックに関連するというだけでデータをいくつか引用する癖があり、「常に『なぜこの文献を読むのか?』『なぜこのデータ・事例をエッセイで紹介するのか』を考えて、論文の自分の論点と直接が関係なければあまり意味がないことを認識した方が良い」とアドバイスを受けました。そのため、データの無駄な引用がないかという観点で定期的に自分のエッセイを見直すようにしていました。

4)繰り返し(repetition)が多いので改善した方が良い。

→自分としては最初に提示した議論に対し、複数の著者の文献を参照しながら分析を深めているつもりが、同じことの繰り返しであると見なされた部分がありました。これに関する改善策として、「議論」→「それに反する議論(Counter-argument)」→「その反論に反する議論(Counter-counter-argument)」を展開する方法を教えてもらいました。また。コースメートがエッセイで自分が支持する議論の不足点 (limitations)を指摘しながらも、それでもこの部分においてこの議論は他の論点よりも有効である、と議論を展開していて、それも良い方法だと真似したりしていました。

先生の評価コメントはとても貴重だったので、要点をメモしてエッセイを書く前に読み直して気を付けるようにしました。また、コメントが短くて理解出来ない時は、研究室に言って質問すると意外な部分を指摘されてとても参考になったりしました。先生の研究室へ訪問するのは緊張しますし、改善点を聞かなければいけないので楽しくはないのですが、次のエッセイへのヒントがたくさん得られました。

6.エッセイにかかった時間

進学前に疑問だった、「論文を書くのにどれくらい時間がかかるんだろう?」という点について私の体験を紹介します。
どれくらいかかるかは人に拠ると思いますが、私は書くペースをつかむまですごく大変で、最初のエッセイは予定通りに書けず最悪な出来でした。その反省を踏まえると、2000語といった比較的短い分量のエッセイでも、初めて書くなら遅くとも1ヵ月半前にはアウトラインを決定済みであるべきだったと考えています。
私はエッセイを4本書いた時点で、「なるべく早く、授業1回目から準備をする」「1~2回で書き上げるのではなく、読んで→書いて→読んで、を何回も繰り返す」とやっと自分なりの良い方法が分かりました。

初めてのエッセイと最後のエッセイ(5~6本目)は、かかる時間の差が大きかったので、当時のメモを参照に比較してみます。

1)最初のエッセイ(2000語)
最初のエッセイは、まともな文章(合格点の50点以上とれる文章)を300語書くのに約6時間かかっていました。そのため、2000語のエッセイ1本に対し8日間、2本のために16日間以上は最低でも確保すべきであったと反省しています。これはアウトライン決定し使う文献をざっくり決めた後に、2000語×1本を書き上げるには最低でも42時間(毎日6時間書くと考えても7日)、追加で校正の時間1日(少なくとも6時間以上)が必要だったと思うからです。

2)最後のエッセイ(5000語)
最後のエッセイでは、300語を3~4時間で書けるようになりました。(1時間75語~100語ですね。)結果として、5000語のエッセイ1本に対して校正含め約14日を使いました。最初のエッセイでは方法が分からなかった一番初めの下書きの作業も、1日6時間の間に必要な文献(20~30ページの論文)をいくつか飛ばし読み、重要個所にハイライトしてそれを300語~600語くらいにまとめることが出来るようになりました。
ただ、書く速度は日に依って違いました。6時間ずっと読んで書けなかった日も、逆に1日に11時間くらい集中して取り組んで900語かけた日もありましたが、私の場合は9時間くらい書いた翌日は集中力が6時間持ちませんでした。そのため、無理なく続けられる1日6~7時間×7日(1週間休みなし)で書く方法が一番続けられて良かったです。

とはいうものの、最後の6つ目のエッセイも予定通りに進みませんでした。予定通りに進まないことも予定して余裕をもって準備していたのですが、その余裕を食いつぶしどんどん遅れ、「もっと直したい。でも時間がない・・・。」と思いながら提出しました。思い返せば「よし、これで満足できる!」と思って提出した論文は、修士論文も含めありませんでした。ベストにたどり着かないけれど、ベターを締め切りまで追求する、なかなかきつい作業でした。

5.エッセイの回数と点数

 この記事では、1年間で書いたエッセイの回数や点数についてご参考に紹介します。

 回数:
1年間で書いたエッセイは合計6本です。
秋学期に4本(2単位×2回)、春学期に2本(2単位×1回)書きました。
1学期に3~4本書いている人もいたので、他のコースと比べて少ないほうだと思います。

 点数:
・秋学期 最初のエッセイ(2000語)×2科目・・・35点と58点
※これらは自己盗用と見なされる行為をしたエッセイの点数です。
2回目のエッセイ(3000語)×2科目・・・63点と68点
・春学期 エッセイ(5000語)×2科目・・・63点と75点

科目によって点数にブレがあります。ちなみに100点満点で合格点は50点以上です。最初のエッセイの35点というのは落第・追試対象となる点数なのですが、その科目では2本のエッセイの平均点で最終的な評価がされる形式でした。私は2回目のエッセイの点数と合算して最終的な点数が合格ラインの50点台となり、何とか追試を免れました。

 科目によっては平均点や最低・最高点が公表されない場合もあり、受講したの科目全部については分からないのですが、公表された科目の平均点は全て60点台でした。70点以上は約30名いるコースメートの中でもとれたのは数名のようで、80点はまれに1人いる(大秀才がとる)という感じでした。

各点数について詳細ご関心があれば下部の’ Postgraduate Marking Criteria’をご覧ください。Exeter大学のものを参照していますが、各大学によって微妙に説明文は異なると思います。共通かなと思うのは、修士論文を含めて点数の平均が60点以上だとmerit, 70点以上だとdistinctionと評価され、修了証にも記載される点です。私は結果的にはmeritを獲得することが出来ました。

参考:

PGT Marking Criteria – Written Work, Dissertation, Presentation - College of Humanities Intranet - University of Exeter

https://intranet.exeter.ac.uk/humanities/studying/subjecthandbooks/history/marking_criteria_for_coursework_and_exams/pgt/

    Postgraduate Marking Criteria

Given below are the main criteria that we apply when marking postgraduate assessments, whether essays, presentations or the dissertation.  These can also be seen on the web in the Postgraduate handbook.  The full marking scheme, grades and criteria can be found in section 4.1 and section 4.3 of the University’s Taught Postgraduate Masters Assessment Procedures.
Section 4.1 is reproduced for ease of reference
4.1 The marking criteria shown below are recommended as a framework for all disciplines within which assessment conventions specific to individual programmes and related to their learning outcomes should be developed.

 Marks Range

Marking Criteria 

 70% and above

 Distinction. Work of exceptional standard reflecting outstanding knowledge of material and critical ability.

 60-69% Merit

 Work with a well-defined focus, reflecting a good working knowledge of material and good level of competence in its critical assessment.

 50-59% Pass

 Work demonstrating adequate working knowledge of material and evidence of some analysis.

 40-49% Condonable fail

 Limited knowledge of core material and limited critical ability.

 39% and below Fail

 Lacking in basic knowledge and critical ability.

 

4.役立った資料

この記事では、エッセイの基本を理解するのに役立った資料を紹介します。

1)日本語の書籍
『英語論文の書き方入門』 迫 桂 (著), 徳永 聡子 (著)
英語エッセイの独特の決まり(thesis statementなど)を簡潔に説明してあり、概要を理解するのにとても役立ちました。

 ・『増補改訂版 はじめての英語論文 引ける・使える パターン表現&文例集』 和田 朋子  (著)
よく使う表現を知るのに役立ったのと、パターン40表現に絞ってあるのも分かりやすかったです。

エッセイの書き方の本はたくさんあるので、私のように事前知識がない人は自分に合う1冊を読んで概要を理解した方がいいかなと思います。また、以下のサイトも簡潔に要点が書いてあって有益でした。
2)英語のウェブサイト
2-1)書き方の基礎
多くの大学のウェブ上でエッセイの書き方の基本を説明してあるのですが、分かりやすかったものを紹介します。リンクが頻繁に変わるようなのですが、無効になったリンクでもキーワードで検索していただけらば見つかると思います。
まず、一番短くて分かりやすかったのがリーズ大学のものでした。
・What is an essay| University of Leeds
https://library.leeds.ac.uk/info/14011/writing/112/essay_writing/6
上記のサイトにはコンテンツ一覧として以下の項目があります。どれもものすごく大切な基礎の基礎です。

What is an essay

Understand the essay question

Research for your essay

Plan your essay

Write an introduction

Write the main body

Write a conclusion

・A guide to writing a paragraph| University of Leeds
https://library.leeds.ac.uk/downloads/download/58/writing_a_paragraph
上記リンクからは議論の流れが分かりました。こんな風に例文と解説をつけている説明は少ないので助かります。
・Essay - OWLL - Massey University
https://owll.massey.ac.nz/assignment-types/essay.php
上記Massey大学のウェブサイトも、エッセイを書き始め~終わりの基礎的な手順が分かりやすく説明されています。リーズ大学のものより説明が多めですが、サンプルエッセイなども載っていて参考になりました。サンプルエッセイは私には難しくて大まかな所しか理解できなかったのですが、それでもコメントつきのサンプルを読むとより理解が深まりました。

2-2)エッセイの質問の解釈の仕方
良いエッセイを書くためには、まずエッセイの質問を「解釈」する必要があり、と言われるのですが、それを簡単に説明しているものです。‘Discuss~’と‘Evaluate~’ではその後同じ文章が続いても、どんな風に質問へ回答すべきかが異なるようです。
紹介した上の2つのウェブサイトでも紹介されてあるのですが、他にも参考になりそうなサイトを共有します。私は以下リンクにある説明をもとに質問を解釈して、アウトラインを考えていました。大学院の最初のエッセイではタイトルがあらかじめ提示されその中から選ぶ形式だったので、そのタイトルでどのように書けば良いか分かり助かりました。

・Essay terms explained | University of Leicester
https://www2.le.ac.uk/projects/oer/oers/ssds/oers/writing-skills/writingskillscg.pdf

・Essay terms explained | Study Skills Centre | Bangor University
https://www.bangor.ac.uk/studyskills/study-guides/essay-terms.php.en

2-3)エッセイ執筆中に利用したウェブサイト
無料で似たようなツールやサイトは他にもあると思いますが、私は以下を使っていました。

・Grammarly
https://app.grammarly.com/
ものすごく基本的な文法チェック(冠詞の抜け)などに役立ちました。

・English thesaurus | Oxford Dictionaries
https://www.lexico.com/en/english-thesaurus
同じ単語を使ってしまうので、類語を探して使う語彙を増やすようにしていました。

・英和辞典・和英辞典 - Weblio辞書
https://ejje.weblio.jp/
ど忘れしたり、分からない単語は調べるようにしていました。

Google 翻訳
https://translate.google.co.jp/?hl=ja

理解できない英語文章のざっくりした意味を把握することに加え、自分が書いた英語文章が意図する内容を伝えているかを確認するのにも有効でした。(自分の英語文章が、日本語で少し違う意味に訳されたりして、細かな修正に役立ちました。)

・・・以上、役に立った資料のご紹介でした。

3.不正行為 (Misconduct)について

「不正行為?そんなのするわけないじゃん!」と思っていた私が、不正行為をしてしまい落第しそうになったので、ここでお伝えします。初歩的なミスで本当に恥ずかしい経験です。もちろん論文の書き方のテキストにも説明が書いてあり理解していたつもりになっていたのですが、正しく理解出来ていなかったので以下に詳細を紹介します。

 

出典:What is academic misconduct? | The University of Edinburgh https://www.ed.ac.uk/academic-services/students/conduct/academic-misconduct/what-is-academic-misconduct

Edinburgh大学の上記サイトを参照します。細かな違いはあるかもしれませんが、基本的に私の大学院でも注意を受けた項目が書いてあります。以下長いですが引用します。

Academic misconduct is any type of cheating that occurs in relation to a formal academic exercise. The University takes all reported incidences of academic misconduct seriously and seeks to ensure that they are dealt with efficiently and appropriately.
 

Examples of academic misconduct

Plagiarism

Plagiarism is the most common and best known example of academic misconduct, and is increasingly a problem within higher education. Plagiarism is the presentation of another person’s work as the student’s own, without proper acknowledgement of the source, with or without the creator’s permission, intentionally or unintentionally.

Collusion
Collusion is a form of plagiarism. It is an unauthorised and unattributed collaboration of students in a piece of assessed work.

Falsification
Falsification is an attempt to present fictitious or distorted data, evidence, references, citations, or experimental results, and/or to knowingly make use of such material.

 Cheating
Cheating is any attempt to obtain or to give assistance in an examination or an assessment without due acknowledgement. This includes submitting work which is not one's own.

Deceit
Deceit is dishonesty in order to achieve advantage. For example, by resubmitting one’s own previously assessed work.

Personation
Personation is the assumption of the identity of another person with intent to deceive or gain unfair advantage.

・・・ということで、そりゃだめだよね、という項目が並んでいますよね。ただ、少し気を付ける必要があるところや例について以下5つご紹介します。

 

1)’Deceit’

’Deceit’は虚偽という意味ですが’ dishonesty in order to achieve advantage. For example, by resubmitting one’s own previously assessed work.’と説明されています。過去の自分の論文の文章を、自分が書いた各別の論文にそのまま使うのも違法となります。私の大学院ではこれを’self-plagiarism’(自己盗用、自己剽窃)と呼んでいましたが、私は最初のエッセイでこれを行ってしまいました。

流れとしては、同じ時期に提出するエッセイが2つあったので、その2つに同じ事例を使いました。良くない行為ですが、エッセイが全く進まず数日ほとんど寝ずに書いたのに締め切り当日にエッセイの3分の2しか書けていなくて焦りに焦った時に、同じ事例を使うことを思いつきました。

その際は一つ目のエッセイから文章をコピーしもう一つのエッセイに張り付けて、その文章の言い回しを編集しました。(ただ限られた時間で行った編集は大まか過ぎて、2つのエッセイの重複個所は多かったことを後で気づきました。)

 

通常、エッセイを提出する際にはTurnitin (ターンイットイン )という剽窃チェックソフトウェアを通します。私が2つのエッセイで使った事例は、2つの論文で「別の生徒の論文」(私が提出した別のエッセイ)からの重複箇所がとても多いことが提出後に表示され、1つのエッセイは合格ラインのより下の30点台、もう一つのエッセイは合格ラインぎりぎりの50点台という評価を受けました。

ただ、この点数は先生方の恩赦的な対応の結果です。先生からは「他の論文から引用しているのに出典を明記していないことは違法行為であるが、エッセイの文脈から考えて君が別の生徒のエッセイから盗作したわけではないと判断してこの点数にした。自分の別のエッセイの文章を使ったのだと思うけど、それも出典を明記しないとだめだよ。自己盗用になるからね。」と言われました。本来であれば違法行為は大学の審査委員会にかけられてしかるべきものです。修士取得が出来ない可能性もあったことに後から気づき、震えました。

Turnitin(ターンイットイン )では、提出したエッセイの中で他の論文と重複する部分が表示されます。その重複している部分に引用をつけているか(つけていないと盗作となります。)や、引用が多すぎないか(割合は人に拠りますが、ある先生は2割以上他の論文から引用があると望ましくないと思うと言っていました。)などを判断出来ます。

Turnitin上では、出版されている論文は重複する論文名や著者まで表示されますが、大学の生徒が授業で提出した論文については名前などの詳細は表示されません。また、私は2つのエッセイを同じ時期に提出したので、提出時にはその重複が表示されませんでした。そこでその時は問題ないと判断したのですが、焦りと睡眠不足で判断力が低下していたのだと思います。

 

もし自分の論文と同じ内容を使う時は、先生のおっしゃる通り出典を明記すべきであり、あまり望ましくないですが自分の文章をそのまま使うなら引用という形で行うべきでした。そして直接引用であろうとそれをまとめていようと、自分の文章から出典が多いということは良くはないと思います。自己盗用について、以下サイトの説明も分かりやすかったです。

Dr.Eddyのお悩み相談:自己剽窃は何が問題なのか?:自己剽窃二重投稿 (editage.jp)

https://www.editage.jp/insights/whats-the-big-deal-about-self-plagiarism 

 

2)’Collusion’について

もう一つの例として、’Collusion’をご紹介します。共謀を意味するこれは、’a form of plagiarism. It is an unauthorised and unattributed collaboration of students in a piece of assessed work.’とあります。

大学院で論文の書き方セミナーを受講した際に講師から過去の事例の話を聞いたことがあるのですが、お互いの同意のもとでの共謀だけではないようでした。その時紹介されたのは、図書館で論文を書いていた人が席を立った隙に、近くにいた友達が、印刷して席に置いてあったその人の書きかけのエッセイを盗んで、それを真似したという過去の事例でした。

席を立った人は、誰かが自分のエッセイを盗用しているとは思わず、そのままの内容で提出したようですが、2人のエッセイの内容は同じと判断されました。そしてこのような場合も、共謀したとして「二人とも」不正行為をしたとして審議会で裁かれるそうです。この2人がどうなったかの最終結果は不明ですが、審議会の判断次第では追試や修士断念などもあり得ます。

論文を盗用した本人は審議会ではものすごく後悔していたようで、なぜ不正行為をしたのかと問われると「提出期限が迫り、焦っていた」と答えたそうです。それを聞いて、自分が自己盗用をした時のことが頭に浮かんで怖くなりました。

盗用された人は例え不正行為をしていなくても疑われてしまうので、書きかけの論文を置きっぱなしにしないように、図書館の共有パソコンにログインしたままで席を立ったりしないように注意してね、とその講師からは言われました。また、論文の筋書きを詳しく友達に話さないようにとも言われましたが、雑談で話すこともあるため線引きが難しいとも思います。この講師の方はきつめに言っていたと思うのですが、こういう事例もある、ということで共有します。

3)Proofreading(校正)の注意点

最後にProofreading(校正)に関して書きます。Proofreading(校正)は基本的には認められていますが気を付けるべき点もあり、以下サイトの中にAcademic Misconduct Proofreading Guidance という以下PDF資料を参照しご紹介します。

academicmisconductproofreadingguidance.pdf (ed.ac.uk)

 

少し引用しますと、’Students are normally permitted to engage a third-party person called a proofreader to make suggestions for minor changes in order to improve the readability of written English in an assignment prior to submission; this process is called proofreading.’とある一方、’Students are not permitted to engage a third party to make more substantive changes to their work, or to produce any content on their behalf. This is editing or ghost-writing and will be considered academic misconduct.’と説明されています。

Minor (重要ではない) changesはいいけどsubstantive(本質的な) changes は不正行為というのが要注意なので、自分の大学のガイダンスを理解している人に校正をお願いすることが大切です。校正会社はもちろん各大学のガイダンスを理解・遵守した内容で校正対応をしますが、知り合いの英語ネイティブに頼むとこの注意点を知らないで「善意で」substantive changesと判断される大きな修正をしてくれることもあるようです。

4) Turnitin(ターンイットイン )について

Turnitinでどのように表示されるかをご紹介します。以下は全体の結果です。提出した私の論文の11%が他の論文とsimilarityがあると表示されています。

 

f:id:suteky:20210403100758p:plain

そして下は具体的にsimilarityがあった場所です。直接引用をしているのですが、その部分や出典元も明記しているのでこれは問題ありません。

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Similarityの割合についてはネイティブのコースメートも迷うところのようで、「提出しようと思ってTurnitin にかけたら20%以上similarityあるって表示されたけどこれって良くないの?書き直す時間ないよー!」と焦ってメッセージが送られてきたりしました。その返答として別のネイティブの子が「うーん必ずしも良くないとは言えないと思うけど・・・」みたいな曖昧な回答をしていて、英語論文を書きなれていると思われるネイティブの子もはっきりとは言えないんだなと思った覚えがあります。

長々と書きましたが、伝えたかったのは、正しい知識と余裕がないと不正行為を行う可能性があるということです。私みたいに馬鹿で不注意な人はいないよな、と思うのですが、恥を忍んで書きました。

2.エッセイ基本

基礎知識を学ぶ方法について

私は最低限の基礎知識を独学で得たので、役に立った情報を共有したいと思います。私はイギリスの大学院で学ぶ前は、英語論文(論文というと大まかですが、大学院では修士論文以外は『エッセイ』を書きました。)の書き方の指導を受けたことはありませんでした。修士前にオプションで受講出来るプリセッショナル(Pre-sessional course)を受けることは有益だと思いますが、私は金銭的に厳しく受講していないので、以下のように自学しました。

・8月(入学前)・・・英語論文の書き方(日本語)の本を2冊メモしつつ読む。各大学のウェブサイトに書いてある情報を読む。

・9月(入学後)・・・・図書館で借りた英語論文の書き方(英語)の本を1冊飛ばしながら読む。そして、大学のエッセイの書き方セミナー(無料)を何回か受ける。

・10月以降・・・試行錯誤しながら、分からないことを調べたり聞いたりしてエッセイ準備をする。 

論文の基本について

1)日本語と英語の論文の違い
まず論文といっても日本語で理解されているものと英語論文で書くべきものは違うことはよく指摘されます。特に私のように、日本の大学でだいぶ前に日本語の卒業論文を書いたけれど、昔のことなので論文の書き方自体を忘れている、という人はある程度時間をとって基礎を勉強した方が良いと思います。また、その後も日本での論文の書き方になっていないかを定期的に確認した方が良いとも感じています。

2)最低限の知っていた方が良いこと
英語圏のAcademic Writingの定義そして、その独特のルールについて学ぶことは必須ですが、日本語の本では『英語論文の書き方入門』 迫 桂 (著), 徳永 聡子 (著)が簡潔に必須事項が書いてあり、役に立ちました。

また、英語のテキストはたくさんありますし、大学の図書館にもあるので入学してから借りて読んでみても良いと思います。入学前に学ぶ際は、英語のオンラインでページも役に立つと思います。最低限の必要な知識が得られました。

役立ったサイトについて「4.役立った資料」記事で紹介しています。

 3)違法行為(Misconduct)について
私が大学にいた10年前は印刷した論文を提出していたのですが、大学院では全てオンラインで提出でした。そこで気をつけないと無意識に違法行為をしてしまう危険性があり、詳しくは「3.不正行為」の記事で紹介します。 

4)論文がDescriptive(記述的、叙述的)と評価され、低い点数を取ることについて

これはどの学校で学んだかに依るとも思うのですが、私は日本の小論文のように書く癖がなかなか抜けず、論文へのコメントとしてlack of analysisやdescriptiveと評価されていました。

では、評価を上げるためにどう書けば良いのでしょうか?

私が読んだ修士論文の書き方についての本’Succeeding with Your Master’s Dissertation: Step-by-step Handbook, 4th Edition’に書いてあったことは、Analyticalに書くことが望ましいというものでした。その本の117ページにはCritical evaluationとdescriptionの違いは、Critical thinkingが追加されているかどうかである、ということでLiterature Reviewを良くするための方法が紹介されていたりしました。 

そもそも、なぜdescriptiveは良くないのでしょうか?

個人的にはdescriptiveな文章も好きだったので、どうしても気になり、勇気を出して先生に聞いて見ました。そしたらあまりに初歩的な質問だったからか驚いた後、「そりゃあ・・・Blooms taxonomy of cognitive learningがあるし・・・」とボソボソと先生は回答して下さいました。これ以上無知な質問したら失礼かもと思いその時はそれ以上聞かず、後でネット検索しました。

また、上記’Succeeding with~’の本の123ページにもBlooms taxonomyが紹介してあり、修士論文はcognitive skillをどれだけ獲得したかで評価されると書いてありました。エッセイもそうなのかなと思います。

では、教育目標分類とは何でしょうか?

出典:教育目標分類とは - コトバンク (kotobank.jp)

教育活動を通じて達成されるべき目標を体系づけたもの。ブルームらのまとめた教育目標分類(タキソノミー)が最も有名。 ブルームらの分類では、数多くの教育目標を「認知的領域」「情緒的領域」「精神運動的領域」の3領域に分け、それぞれの領域ごとに教育目標を系列化した。もとは学校教育の現場で授業のカリキュラムを組んだり、生徒の習得状況を測定するための枠組みとして提唱されたが、教育内容より学習過程に焦点を当てているため、どのような学習においても共通する目標を整理しているといえる。

・・・なるほど、どのような学習においても共通する目標なんだ、と納得したところで3分類の1つ「認知的領域」については以下のように説明されています。

出典:認知的領域とは - コトバンク (kotobank.jp)

ブルームらの教育目標分類の1領域。教育内容の理解・習得に関する目標からなる。以下のような階層をもち、各階層にはさらに細かい目標が設定されている。

1.知識 …… 概念・基準・方法・手続きなどを知っている、言える

2.理解 …… 知識を別の言葉で言い換えられる、説明や要約ができる

3.応用 …… 知識を新しい具体的な場面に適用できる

4.分析 …… 知識の内容を、構成要素や部分に分解できる

5.総合 …… 知識の構成要素や部分をまとめて、新しい全体を構成できる

6.評価 …… 目的や基準に照らして、知識の価値を判断できる

 ・・・1956年に開発されたこの分類ですが、上記の説明は2001年に開発された改訂版タキソノミーのものです。ただ大まかな意味は変わっていないと感じています。全くの私見ですが、私の論文は応用レベルだと50点代、分析レベルだと60点以上を取れた気がしています。

まあ、どのように具体的にanalyticalに書くかは毎回苦戦していましたが、根底にある考えを理解することで「あんなに勉強したけど、エッセイがdescriptiveだからこの分類では教育目標の達成状況が低い、として低い点数をもらったのね。」と納得して次の論文に取り組むことが出来ました。

1.エッセイ奮闘記を書く理由

私は大学院のエッセイの書き方について毎回苦戦していたので、試行錯誤をさらすことで少しは役に立ったり、同じ失敗をする人が減ったりするといいなあと思って書きます。

ただ最初にお伝えしたいのが、これは私の体験を書いているだけで裏付けも専門性もないということです。そのため、書いてあることを実行して不利益があっても責任はとれませんのでどうぞご了承下さい。

それでも書く理由は、私が進学前に雑談のような話でも他の人がエッセイにどのように取り組んでいるか知りたかったのと、友達との会話からヒントをたくさん得たからです。

エッセイで書き方や高い評価を得る方法は大学の先生や専門家が書いた市販のテキストが役に立つと思いますし、コースや人に拠って何が正しいかは違うと思います。ただ、点数の推移や私のように超初心者が最低限何を知る必要あったの?ということを私の独断を含めこのページでお伝えできたらと思います。

ちなみに私の受講した科目4つは全て、エッセイのみで評価されました。授業の出欠はとられますが、それは評価に直接は関係ありません。課題のエッセイは通常2000~5000語を数回提出する形でしたが、詳細は「5.エッセイの回数と点数」の記事などをご覧いただけたら幸いです。

修羅場の図書館

今回は私が学生時代の大半を過ごした、大学の図書館について書きます。

進学してしばらくは、それまでの仕事をする日々から、1日の大半を「勉強」しかも「自習」に費やす生活に慣れるまで大変でした。自宅だとつい他のことをしてしまうので、強制的に勉強に集中出来る大学の図書館にほぼ毎日通っていました。

私の大学の図書館は1つしかなく年々増え続ける生徒に対して明らかに座席数が足りませんでした。コンピュータールームなど他の施設もあるものの、立地が良く本もパソコンも利用できる図書館はやはり人気でいつも込み合っていました。そして学期末(学部生にとっての試験前、大学院生のとっての課題提出前)には超絶込み合い、不快指数は最高潮に達します。

少し説明しますと、図書館は24時間利用可能です。4階建てで、用途ごとにいくつかのセクション(会話厳禁のSilent Sectionから多少話せるGroup Sectionまで)に分かれています。蓋がついた容器に入っていれば飲み物持参可能なので、カフェで買ったコーヒーとか持ち込めたり、飲み水補給場所があるので持参したペットボトルの水を入れられたりと何かと便利でした。私は大きなモニター付きのパソコンが設置されている場所に朝から夕方まで居座ることが多かったのですが、色々な人がいて印象深かったのでそれを少し紹介します。

・印象に残るあの人①ずっと食べている人
 ある時私の前に座った人がおもむろにカバンから出したサンドイッチ的な何かを食べ始めました。図書館で食事は禁止ですが見つからない程度に食べている人はけっこういたので、彼女もそうかなと思っていました。10時頃だったと思います。私はお昼ご飯何食べようかなーとか思いながら、パソコンで文献を読んでいました。それから1時間くらいたって「ポリポリポリ・・・」と軽快な音が聞こえ、また彼女が何かを食べているのが分かりました。それから30分後、そしてそれから1時間後・・・と彼女が食べ続けるので、4回目には「お腹痛くなるんじゃないかな、大丈夫かな」と余計な心配をしてしまいました。別の日にも近くで誰かがずっと何かを食べている音(「パクパクパクパク、ゴクゴク・・・ガサっ、パリパリパリ・・・」)が聞こえてとてもシュールでした。
後日友達と話していたら、図書館でその子の近くに座っていた人はずっと水を飲んではトイレに行っていたそうです。「あれはストレスのせいだろうねえ」と言っていて、勉強に集中できないと飲食をしたくなる気持ちはすごく分かるねと同意し合いました。私はエッセイ提出が近づくと胸やけがして物が食べられず水分ばかりをとっていましたが、友達はずっと食べてしまう、と言っていました。

・印象に残る人々②友達以上恋人未満の二人(多分)
 図書館で偶然友達に会うと嬉しいですし、それが孤独にエッセイを書いている時なら尚更です。ということで、別の日に私の向かい側に座っていた女の人はそれまで静かだったのですが、男友達が「久しぶりー」と話しかけ横に座ったとたんに満面の笑みで話し始めました。座っていた場所は会話禁止のスペースだったので、周りの人々はチラッと二人を見たり、イヤホンをつけはじめたりと気にしているのが分かりました。2人は「大声出すと怒られちゃうね」とか笑いあって声を少し落とすもののすぐにまた声が大きくなって・・・を繰り返します。弾む(二人の)会話。高まる(周りの)ストレス。
・・・私はつい、「仲いいな、しかし悪いけど煩いな。ボディタッチのなさかげんから友達同士っぽいけどお互いまんざらでもないかんじ・・・もう二人、付き合っちゃえばいいじゃーん」とか観察してしまい、こんなことに気を取られるのは集中してないからだと反省してイヤホンをつけました。お気に入りの音楽を聴きながらエッセイに集中しだして、気づいたら二人はいなくなっていたので、その後どうなったかは不明です・・・。

・印象に残る人③ずっと動いている人
私も同じ傾向にあるため気を付けているのですが、やたらと動く人がいます。そういう人は近くに座った瞬間に分かります、なぜなら大きな音がするからです。まずは「ガッ!(椅子をひく)ドスン!(カバンを机に置く)」の後に「ガサガサガサガサ・・・バン! ガサガサガサガサ・・・ドン!!(カバンから色んなものを机の上に出す音)」という音が聞こえます。その後、その人がパソコンの電源を入れてしばらく静かになったかなと思ったら、ふいに大きく動くのが目の端に見え、スマホを忙しなく操作しだしたりします。このように目の前で小刻みに動く&動作音が大きい&共有の机が衝撃で毎回小さく揺れる・・・が続くと、ただでさえ課題前で焦っているので「あああああーーー」と叫びたくなっていました。ただ、何回か経験してこういう方は1時間もしないうちに席を離れることが多いと分かり、しばし我慢するようにしていました。

ある時は生徒がお子さんを連れてきたようで、キャッキャッ!と可愛い笑い声とともに目の前を通り過ぎていきました。それまで少しどんよりしていた空気がふっと緩み、私も周りの人も笑顔になりました。その時図書館の中では利用者の雰囲気が良くも悪くも共有されるものだなあと思いました。
私は適度な緊張感が持てる図書館が好きで、みんな頑張っているから私もやらなきゃと思えたりしました。自分の時間とお金をほぼ全て勉強に費やせるなんて恵まれていることは実感しつつも、窓から見えるきれいな青空を見ながら「こんな天気がいい日にいつもいつも籠って勉強なんて・・・大学院が修了したら遊びまくるぞ!!」と思ったりしました。
レンガ造りの、あのこぢんまりとした大学の図書館にもう行くことはないですが、悲喜こもごもの思い出が詰まった愛着のある場所です。

写真のご紹介:晴れた日の一枚(緑に癒されつつもずっと図書館にいるのが切なくて撮影しました)

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勝手に尊敬② エスコバル・アルトゥーロさん

前回の記事のセンさんに引き続き、尊敬する人をもう一人ざっくりご紹介します。

お二人目:エスコバル・アルトゥーロさん
コロンビア出身の文化人類学者です。

エスコバルさんのすごさは、「脱開発」という考えを深め続けている点だと思います。エスコバルさん含め脱開発論者は開発に反対し、開発に代わる考え方を提案しています。(中にはこれまでの開発援助は全て失敗に終わっている!と断言する方もいたりします)。 私はある程度開発・開発援助の良い効果を信じているのでこの論調の全てには同意出来ないのですが、その視点から主流の(今多くの場所で行われている)開発援助の改善点に気づき大変にしびれました。こちらも2つ紹介します。

すごいと思うところ①「低開発」は「発明された」という視点
エスコバルさんは開発を批判しまくりなので、最初に授業の必須文献として彼が1995年に出版した’Encountering Development’*1 を読んだとき「おおお。。。」と衝撃を受けました。まだ批判的な文献をどう読み解けばいいか分かっていなかった頃なので余計に驚きました。
彼はまずはアメリカのトルーマン大統領が1949年に「低開発」地域への支援を表明した時に、今に繋がる「低開発」という概念が「発明」され、世界を「先進国」と「途上国」に分ける考え方が広まったと説きます。*2 つまりは勝手に「貧しく悲惨な」地域を決められたということです。そしてその生活をしている地域の人々を助けるという大義名分の裏には、共産主義の広まりを防ぐことやアメリカが商売出来る市場を開拓する意図があったと指摘するとともに、その「開発」の考えは偏ったものであることも解説します。
・・・余談ですが、ここで問題なのは外から「低開発」の概念が押し付けられたことなのですよね。上記のアメリカの例を見ると、開発は「低開発」国のためというよりは、アメリカのために行っている面の方が大きいのではという見方も出来ます。個人的には税金を使って「開発援助」を行う以上、自国の利益を全く考えない政策は難しいのではと考えていますが、トルーマン大統領の演説では援助が低開発国のために行う慈善行為のように巧みに表現されています。 ただそのせいである地域が「低い」地位に勝手に落とされたり、援助と称して「途上国」への「先進国」による政策介入が正当化されたりした事例もあります。

すごいと思うところ②開発に代わるものを模索
1990年代に現状の開発を批判したエスコバルさんは、今の経済や政治体制に代わる案も模索しています。 「近代化」によって人間から自然環境が引き離された、と指摘したエスコバルさん。そんな彼が指示するのがpluriversalism(無理に訳すなら「多様主義」でしょうか)であり、その試みの一つとして注目しているのがラテンアメリカのBuen Vivir *3 という考えです。では近代化の弊害とは何か、Buen Vivirでそれがどう改善できるのかについても彼の意見はとても興味深いです。

脱開発論への批判
主なものとして開発の概念を一面的に見すぎている、開発を否定しながらもその代替案を明確に提案していない、というのが挙げられます。*4

上記批判は納得する部分があるものの、エスコバルさんや他の脱開発論者の考えのおかげで開発援助の偏りを認識出来たことはとても良かったです。ただ・・・ 他の生徒も言っていたけれど、エスコバルさんの論文も読みやすくはありません。コースメイトが「エスコバルはたまに哲学的過ぎて何を言っているかよく分からないんだよねー。いや、エスコバルのことは好きだよ?でも~」みたいな言い方をしていて、知り合いみたいな話し方だなと思って面白かったです。

ということで、以上2名のすごい方でした。紹介したい方はもっといるのですが、余裕があればまた!

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*1:’Encountering Development: The Making and Unmaking of the Third World’, Arturo Escobar

*2:トルーマン大統領の就任演説
Harry Truman's Inauguration Speech - Four Points
Truman's Four Points Speech | Wyzant Resources 

*3:Buen Vivir(英辞郎 on the WEBより抜粋)
「ブエン・ビビール◆ケチュア語のSumak kawsayをスペイン語訳したもの。日本語に直訳すると『よい生活』となるが、これは自然環境と調和しつつ、人間として尊厳のある生活を送ることを指す。2008年に改定されたエクアドル憲法でこの概念が採択されて以来、特に中南米においてこの概念が広まりつつあり、英語文献でもスペイン語のままbuen vivirと表記されることが増えている。」
エスコバルさんの考えが分かるインタビュー
INTERVIEW, Farewell to Development, Arturo Escobar
Farewell to Development | Arturo Escobar 

*4:脱開発論への批判 :
‘Introduction to international development : approaches, actors, and issues’ third edition, ed. by Paul A. Haslam; Jessica Schafer; Pierre Beaudet,
Introduction to International Development: Approaches, Actors, and Issues (3rd Revised edition) | Oxford University Press