イギリス留学 ざっくり日記

大学院で社会開発を学んだ話

「社会開発」の定義

今回は「社会開発」とは何かについて書きます。
友達に「『社会開発』って何?『開発』と違うの?」とよく聞かれたのですが、学ぶ前は私もよくわかっていませんでした。今はざっくりした解釈として「開発って経済的な発展のことだけじゃないよね!社会的なことも大事よね!」というのが社会開発の考えと理解しています。

私の解釈はさておき、インターネットで調べると以下定義があります。
社会開発とは「経済開発の進展に伴う国民生活への有害な影響を除去または緩和するために、保健衛生・住宅・雇用・教育・社会保障などの公共的サービスの増進を図ること。」*1

また「テキスト 社会開発」という本に載っていた説明も以下ご紹介します。*2そこでは「社会開発を一義的に定義することは困難」だとしながらも、社会開発に含まれる要素5つ、誤解6つが載っていました。
社会開発に含まれる要素は「経済開発ではない開発」、「個人よりも社会全体を対象とする」、「潜在能力の発揮を目指す」、「当事者の主体性」、「外部者による意図的な働きかけ」の5つです。そしてこれを以下のようにまとめられています。

社会開発が話題になる場合には「①経済的・量的な成長とは異なる基準で社会の発展を捉えようとする視点、②社会の成員を取り巻く社会環境に働きかけることを重視する点、③個々人の潜在能力の発現を目指す視点、④当事者の主体性を重視し、変化の結果のみならず過程(プロセス)を重視する点⑤外部者の働きかけのありかたを重視する点、のいずれかの要素(場合によっては複数の要素)が含まれており、こうした要素が社会開発の中心的な概念を構成していると考えられるのである」

また社会開発をめぐる誤解6つを挙げられる中で「誤解1:社会開発とは社会セクターの開発のみを指す」や「誤解4:経済成長の否定の上に社会開発が登場した」は私も抱いていた誤解なのでとても興味深く読みました。

誤解1の説明として、一見インフラ建設は社会開発とは無関係に思えますが、「多くのインフラプロジェクトにも必ず社会開発的な側面が含まれうるのであり、社会開発とは開発の全てのセクターに関する問題」と書かれています。また、誤解4の説明として「批判されているのは経済成長『のみ』に開発努力を注入し、分配の問題を顧みない事である」とあります。

大学院の社会開発コースの「概論」の授業で学ぶ内容も、教育・マイクロファイナンス・気候変動・・・と幅広いテーマを扱っていました。ただやはり社会的文脈をより重視し、既存の開発援助の中で使われる量的な基準を批評的に分析する、という点は共通していたように思います。Social Capital(社会関係資本)という言葉も頻繁に使われます。これは「社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念」*3なのですが、よく出てくるのでつい日常生活でもたくさん友達がいる人に対して「あの人のsocial capital半端ないわー」と使ってしまうほどでした。

社会学」との関係は?
私が社会開発に興味をもったきっかけが「開発援助の社会学」という本だったため、「社会開発」と社会学の関係性について疑問に思っていたのですが、ある本で「開発の中で社会学の知見が一番生かせるのが社会開発」という文章をみて納得しました。
また「名古屋大学大学院国際開発研究科」*4のホームページには「社会開発」の説明に以下一文が含まれています。

「社会開発分野で扱う具体的な研究課題には、ジェンダー、教育、保健・医療、貧困、参加型開発、紛争などがあります。こうした課題を研究するのは、社会学者でなければいけないというわけではありません。実際、多くの経済学者や政治学者が、社会開発分野の研究課題に取り組んでいます。」

これを読んで「良かったー社会学を知らなくても大丈夫なのね」と安心していたのですが、社会開発コースの授業で説明では社会学の基本用語も多く出ていたので、知識のない私はいちいち検索する必要がありました。調べるのは大変でしたが知ってみるととても面白く、自分の関心に合った内容でした。

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*1:大辞林 第三版)

*2:「テキスト社会開発」(佐藤寛、アジア経済研究所開発スクール編)

*3:社会関係資本の定義
社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念。抽象的な概念で、定義もさまざまだが、ソーシャルキャピタルが蓄積された社会では、相互の信頼や協力が得られるため、他人への警戒が少なく、治安・経済・教育・健康・幸福感などに良い影響があり、社会の効率性が高まるとされる。「デジタル大辞泉

*4:名古屋大学大学院国際開発研究科」

社会開発 | 国際協力専攻 DICOS