イギリス留学 ざっくり日記

大学院で社会開発を学んだ話

人権についての考え方②(子どもの権利について)

前回の記事に書いた人権の議論に続いて、2つ目の議論である子どもの権利について書きます。

世界人権宣言の考えを子どもに当てはめたものが1989年の国連総会で採択された’Convention on the Rights of the Child’(UNHCR)、「子どもの権利に関する条約」です。子どもの権利について特になるほどーと思ったのは以下の3点です。

1.子どもの権利は、主に3つのP、Provision(供与)、Protection(保護)、そしてParticipation(参加)でグループ分けされる。
3つのPは、成長に必要な食べ物などを供与(Provision)され、虐待などから保護(Protection)され、自分に関する決定に参加(Participation)する権利です。(これにPreventionを入れて4つのPとすることもあるようです。)そして参加する権利は特に議論の的になります。なぜなら子どもが「参加」するにあたってどの程度その子たちの意見を取り入れるべきか判断が難しいからです。
例えば、義務教育はUNCRCの28条に定められており、子どもはそれを拒否出来ません。でも「義務教育ではなく違うことがしたい(例:カリキュラムにない科目を勉強したい)」という子どもの意見もあると思います。また、このUNCRCの特徴は子どもに関する限り「最善の利益(the best interest)」を第一に考えることが重要視されることです。*1

2.子どもの参加する権利に関する議論の争点は、子どもの’Competencies’(能力)がどの程度あると認めるかである。
能力といっても身体的、知的、社会的な能力と様々考えられますが、大人と同じ能力があると考えるか、まだ成長途中であるため大人よりは未熟であると考えるかの主に2つの捉え方があります。この捉え方について、David Arehatdは’Child liberalists’(子どもに権限を与えたい大人)と、’Child care takers’(子供を守りたい大人)に分けました。ただ能力については個人差もありますし、大人と同じ権利を与えることで逆に子供の負担が増えるのではという考えもあります。個人的には、状況や人に拠ると思います。

3.普遍主義のUNHCRと異なる、アフリカ諸国版の子どもの権利もある
文化相対主義の考えの一つとして、アフリカ諸国の文化を反映した’The African Charter on the Rights and Welfare of the Child’が作成され、1990年にアフリカ統一機構 (OAU) で採択されたそうです。*2 ちなみにOAUは今はアフリカ連合という名前になっています。

アフリカ憲章とUNCRCの大きな違いは、子どもの「責任」について書いていることです。例えば13条では子どもの責任について、’ (a) to work for the cohesion of the family, to respect his parents, superiors and elders at all times and to assist them in case of need;’ということも書いてあり、権利とともに家族への責任にも焦点が当てられています。一方、UNCRCは親の子どもへの責任は書いてありますが、子どもの責任についての記述はありません。

これで思い出したのが、協力隊時代に自分の考えと現地の考えに違いを感じたことです。私は子どもの教育を受ける権利しか頭になかったのですが、子どもが学校に行かずに家の手伝いをするという状況がみられるのは経済的な原因や教育の価値が理解されていないことに加え、この集団の責任という文化の考えに拠っていたのだなと思います

また、経済的に余裕がない家庭出身の生徒が、色々苦労してやっと受給できた奨学金で高校に入学した時のことも思い出しました。「奨学金の使い道」について聞かれたときに彼女が「親に一部あげた」と言ったので当時の私は衝撃を受けました。個人的には彼女になるべくお金の心配がない学校生活を送ってほしかったので進学するために全部使って欲しいと思ったのですが、このアフリカ憲章の内容を考えると、彼女をとりまく社会的文脈では当然とされる行為だったのかなと気づきました。

私は子どもを保護しなければという気持ちが強く、UNCRCの考えの大部分に賛成していますが、そうでない考えも理解する必要があると今は感じています。

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