イギリス留学 ざっくり日記

大学院で社会開発を学んだ話

3.不正行為 (Misconduct)について

「不正行為?そんなのするわけないじゃん!」と思っていた私が、不正行為をしてしまい落第しそうになったので、ここでお伝えします。初歩的なミスで本当に恥ずかしい経験です。もちろん論文の書き方のテキストにも説明が書いてあり理解していたつもりになっていたのですが、正しく理解出来ていなかったので以下に詳細を紹介します。

 

出典:What is academic misconduct? | The University of Edinburgh https://www.ed.ac.uk/academic-services/students/conduct/academic-misconduct/what-is-academic-misconduct

Edinburgh大学の上記サイトを参照します。細かな違いはあるかもしれませんが、基本的に私の大学院でも注意を受けた項目が書いてあります。以下長いですが引用します。

Academic misconduct is any type of cheating that occurs in relation to a formal academic exercise. The University takes all reported incidences of academic misconduct seriously and seeks to ensure that they are dealt with efficiently and appropriately.
 

Examples of academic misconduct

Plagiarism

Plagiarism is the most common and best known example of academic misconduct, and is increasingly a problem within higher education. Plagiarism is the presentation of another person’s work as the student’s own, without proper acknowledgement of the source, with or without the creator’s permission, intentionally or unintentionally.

Collusion
Collusion is a form of plagiarism. It is an unauthorised and unattributed collaboration of students in a piece of assessed work.

Falsification
Falsification is an attempt to present fictitious or distorted data, evidence, references, citations, or experimental results, and/or to knowingly make use of such material.

 Cheating
Cheating is any attempt to obtain or to give assistance in an examination or an assessment without due acknowledgement. This includes submitting work which is not one's own.

Deceit
Deceit is dishonesty in order to achieve advantage. For example, by resubmitting one’s own previously assessed work.

Personation
Personation is the assumption of the identity of another person with intent to deceive or gain unfair advantage.

・・・ということで、そりゃだめだよね、という項目が並んでいますよね。ただ、少し気を付ける必要があるところや例について以下5つご紹介します。

 

1)’Deceit’

’Deceit’は虚偽という意味ですが’ dishonesty in order to achieve advantage. For example, by resubmitting one’s own previously assessed work.’と説明されています。過去の自分の論文の文章を、自分が書いた各別の論文にそのまま使うのも違法となります。私の大学院ではこれを’self-plagiarism’(自己盗用、自己剽窃)と呼んでいましたが、私は最初のエッセイでこれを行ってしまいました。

流れとしては、同じ時期に提出するエッセイが2つあったので、その2つに同じ事例を使いました。良くない行為ですが、エッセイが全く進まず数日ほとんど寝ずに書いたのに締め切り当日にエッセイの3分の2しか書けていなくて焦りに焦った時に、同じ事例を使うことを思いつきました。

その際は一つ目のエッセイから文章をコピーしもう一つのエッセイに張り付けて、その文章の言い回しを編集しました。(ただ限られた時間で行った編集は大まか過ぎて、2つのエッセイの重複個所は多かったことを後で気づきました。)

 

通常、エッセイを提出する際にはTurnitin (ターンイットイン )という剽窃チェックソフトウェアを通します。私が2つのエッセイで使った事例は、2つの論文で「別の生徒の論文」(私が提出した別のエッセイ)からの重複箇所がとても多いことが提出後に表示され、1つのエッセイは合格ラインのより下の30点台、もう一つのエッセイは合格ラインぎりぎりの50点台という評価を受けました。

ただ、この点数は先生方の恩赦的な対応の結果です。先生からは「他の論文から引用しているのに出典を明記していないことは違法行為であるが、エッセイの文脈から考えて君が別の生徒のエッセイから盗作したわけではないと判断してこの点数にした。自分の別のエッセイの文章を使ったのだと思うけど、それも出典を明記しないとだめだよ。自己盗用になるからね。」と言われました。本来であれば違法行為は大学の審査委員会にかけられてしかるべきものです。修士取得が出来ない可能性もあったことに後から気づき、震えました。

Turnitin(ターンイットイン )では、提出したエッセイの中で他の論文と重複する部分が表示されます。その重複している部分に引用をつけているか(つけていないと盗作となります。)や、引用が多すぎないか(割合は人に拠りますが、ある先生は2割以上他の論文から引用があると望ましくないと思うと言っていました。)などを判断出来ます。

Turnitin上では、出版されている論文は重複する論文名や著者まで表示されますが、大学の生徒が授業で提出した論文については名前などの詳細は表示されません。また、私は2つのエッセイを同じ時期に提出したので、提出時にはその重複が表示されませんでした。そこでその時は問題ないと判断したのですが、焦りと睡眠不足で判断力が低下していたのだと思います。

 

もし自分の論文と同じ内容を使う時は、先生のおっしゃる通り出典を明記すべきであり、あまり望ましくないですが自分の文章をそのまま使うなら引用という形で行うべきでした。そして直接引用であろうとそれをまとめていようと、自分の文章から出典が多いということは良くはないと思います。自己盗用について、以下サイトの説明も分かりやすかったです。

Dr.Eddyのお悩み相談:自己剽窃は何が問題なのか?:自己剽窃二重投稿 (editage.jp)

https://www.editage.jp/insights/whats-the-big-deal-about-self-plagiarism 

 

2)’Collusion’について

もう一つの例として、’Collusion’をご紹介します。共謀を意味するこれは、’a form of plagiarism. It is an unauthorised and unattributed collaboration of students in a piece of assessed work.’とあります。

大学院で論文の書き方セミナーを受講した際に講師から過去の事例の話を聞いたことがあるのですが、お互いの同意のもとでの共謀だけではないようでした。その時紹介されたのは、図書館で論文を書いていた人が席を立った隙に、近くにいた友達が、印刷して席に置いてあったその人の書きかけのエッセイを盗んで、それを真似したという過去の事例でした。

席を立った人は、誰かが自分のエッセイを盗用しているとは思わず、そのままの内容で提出したようですが、2人のエッセイの内容は同じと判断されました。そしてこのような場合も、共謀したとして「二人とも」不正行為をしたとして審議会で裁かれるそうです。この2人がどうなったかの最終結果は不明ですが、審議会の判断次第では追試や修士断念などもあり得ます。

論文を盗用した本人は審議会ではものすごく後悔していたようで、なぜ不正行為をしたのかと問われると「提出期限が迫り、焦っていた」と答えたそうです。それを聞いて、自分が自己盗用をした時のことが頭に浮かんで怖くなりました。

盗用された人は例え不正行為をしていなくても疑われてしまうので、書きかけの論文を置きっぱなしにしないように、図書館の共有パソコンにログインしたままで席を立ったりしないように注意してね、とその講師からは言われました。また、論文の筋書きを詳しく友達に話さないようにとも言われましたが、雑談で話すこともあるため線引きが難しいとも思います。この講師の方はきつめに言っていたと思うのですが、こういう事例もある、ということで共有します。

3)Proofreading(校正)の注意点

最後にProofreading(校正)に関して書きます。Proofreading(校正)は基本的には認められていますが気を付けるべき点もあり、以下サイトの中にAcademic Misconduct Proofreading Guidance という以下PDF資料を参照しご紹介します。

academicmisconductproofreadingguidance.pdf (ed.ac.uk)

 

少し引用しますと、’Students are normally permitted to engage a third-party person called a proofreader to make suggestions for minor changes in order to improve the readability of written English in an assignment prior to submission; this process is called proofreading.’とある一方、’Students are not permitted to engage a third party to make more substantive changes to their work, or to produce any content on their behalf. This is editing or ghost-writing and will be considered academic misconduct.’と説明されています。

Minor (重要ではない) changesはいいけどsubstantive(本質的な) changes は不正行為というのが要注意なので、自分の大学のガイダンスを理解している人に校正をお願いすることが大切です。校正会社はもちろん各大学のガイダンスを理解・遵守した内容で校正対応をしますが、知り合いの英語ネイティブに頼むとこの注意点を知らないで「善意で」substantive changesと判断される大きな修正をしてくれることもあるようです。

4) Turnitin(ターンイットイン )について

Turnitinでどのように表示されるかをご紹介します。以下は全体の結果です。提出した私の論文の11%が他の論文とsimilarityがあると表示されています。

 

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そして下は具体的にsimilarityがあった場所です。直接引用をしているのですが、その部分や出典元も明記しているのでこれは問題ありません。

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Similarityの割合についてはネイティブのコースメートも迷うところのようで、「提出しようと思ってTurnitin にかけたら20%以上similarityあるって表示されたけどこれって良くないの?書き直す時間ないよー!」と焦ってメッセージが送られてきたりしました。その返答として別のネイティブの子が「うーん必ずしも良くないとは言えないと思うけど・・・」みたいな曖昧な回答をしていて、英語論文を書きなれていると思われるネイティブの子もはっきりとは言えないんだなと思った覚えがあります。

長々と書きましたが、伝えたかったのは、正しい知識と余裕がないと不正行為を行う可能性があるということです。私みたいに馬鹿で不注意な人はいないよな、と思うのですが、恥を忍んで書きました。